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BC059『Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』

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今回取り上げるのは、『Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』。やっかいな「頭の中の声」と付きあうための方法が提示される一冊です。

書誌情報

以下のページにまとめました。

ブックカタリストBC059用のメモ - 倉下忠憲の発想工房

チャッターとは

人間には特殊な能力がある。目の前の現実から離れて、別の対象について思いを巡らせる能力だ。過去の出来事を思い出し、あのときはこうしておけばもっとよい結果が得られだろう、などと考えたり、未来の目標を設定し、今はこれに取り組むべきだ、などと考えたりできる。

そのような思考は言語というフォーマットを用いて行われるが、たいてい口に発することなく内面の声を通すことになる。つまり、内面の声とは、セルフコミュニケーションのツールなわけだ。

さて、他の人とのコミュニケーションでも良き関係とそうでない関係がある。他者が適切なメンターになったり、厳しい批判者になったりする。厳しい批判者は、人を萎縮させ、過剰なストレスを与え、ときに過剰な防衛反応を呼んだりもする。同じことがセルフコミュニケーションでも起きる。それが本書がいうChatter(チャッター)である。

本来は、"自分"(行為主体者)を適切に導くためのセルフコミュニケーション=内面の声なわけだが、環境や状況が悪ければその役割は一変してしまう。あたかもタロットカードの向きが逆になるかのように。

内面の声は、自発的な注意の対象の変更をもたらすが、それが無意識的な体の動きを阻害したり、行為主体者にネガティブな対象にだけ注意を向けるように促してしまう。そのようなネガティブな結果が訪れると、さらにChatterは声を大きくし、「ほら、やっぱりダメじゃん。ここがダメなんだよ」とさらにネガティブな要素に注意を向けさせる。循環構造の中にはまりこんでしまうわけだ。

内面の声そのものは、有益な働きを持つが、かといって完璧なものではない。馬の近くで大きな音を立てると制御不能になるという話を聞くがそれに似ているだろう。音を立てる→馬が暴れる→周りが慌てる→さらに馬が驚いて暴れる→……。そうしたときは、むしろすごく落ち着いて対処する厩務員が必要だろう。内面の声でも同じなのだ。

本書ではさまざまなテクニックが紹介されているが基本的には「距離を置くこと」がコンセプトになっている。心理的な距離、時間的な距離。形は多様だが、どれも引きつけられた注意をズームアウトすることによって、チャッターの声を静めることを目指す。

そう。人間は、たしかに考える能力を持つ。システム2は(特殊な状況を除けば)誰しもが持っている。あとはそれが発揮させやすい環境にあるかどうかだ。あるいは、そういうものがあり、環境によって発揮されたりされにくかったりするのだ、という知識(というよりも知恵)を有しているかだ。

よって本書は「内面の声」とのつき合い方を提示する本でもあるが、さらにいえば「アテンション・マネジメント」に関する本でもある。注意をどのように制動するのか。そこで重要な鍵を握るのが「ズームインとズームアウト」だ。これは、倉下が最近考えている「思考のための道具」の重要なツールセットになるだろう。


This is a public episode. If you’d like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
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書誌情報

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ブックカタリストBC059用のメモ - 倉下忠憲の発想工房

チャッターとは

人間には特殊な能力がある。目の前の現実から離れて、別の対象について思いを巡らせる能力だ。過去の出来事を思い出し、あのときはこうしておけばもっとよい結果が得られだろう、などと考えたり、未来の目標を設定し、今はこれに取り組むべきだ、などと考えたりできる。

そのような思考は言語というフォーマットを用いて行われるが、たいてい口に発することなく内面の声を通すことになる。つまり、内面の声とは、セルフコミュニケーションのツールなわけだ。

さて、他の人とのコミュニケーションでも良き関係とそうでない関係がある。他者が適切なメンターになったり、厳しい批判者になったりする。厳しい批判者は、人を萎縮させ、過剰なストレスを与え、ときに過剰な防衛反応を呼んだりもする。同じことがセルフコミュニケーションでも起きる。それが本書がいうChatter(チャッター)である。

本来は、"自分"(行為主体者)を適切に導くためのセルフコミュニケーション=内面の声なわけだが、環境や状況が悪ければその役割は一変してしまう。あたかもタロットカードの向きが逆になるかのように。

内面の声は、自発的な注意の対象の変更をもたらすが、それが無意識的な体の動きを阻害したり、行為主体者にネガティブな対象にだけ注意を向けるように促してしまう。そのようなネガティブな結果が訪れると、さらにChatterは声を大きくし、「ほら、やっぱりダメじゃん。ここがダメなんだよ」とさらにネガティブな要素に注意を向けさせる。循環構造の中にはまりこんでしまうわけだ。

内面の声そのものは、有益な働きを持つが、かといって完璧なものではない。馬の近くで大きな音を立てると制御不能になるという話を聞くがそれに似ているだろう。音を立てる→馬が暴れる→周りが慌てる→さらに馬が驚いて暴れる→……。そうしたときは、むしろすごく落ち着いて対処する厩務員が必要だろう。内面の声でも同じなのだ。

本書ではさまざまなテクニックが紹介されているが基本的には「距離を置くこと」がコンセプトになっている。心理的な距離、時間的な距離。形は多様だが、どれも引きつけられた注意をズームアウトすることによって、チャッターの声を静めることを目指す。

そう。人間は、たしかに考える能力を持つ。システム2は(特殊な状況を除けば)誰しもが持っている。あとはそれが発揮させやすい環境にあるかどうかだ。あるいは、そういうものがあり、環境によって発揮されたりされにくかったりするのだ、という知識(というよりも知恵)を有しているかだ。

よって本書は「内面の声」とのつき合い方を提示する本でもあるが、さらにいえば「アテンション・マネジメント」に関する本でもある。注意をどのように制動するのか。そこで重要な鍵を握るのが「ズームインとズームアウト」だ。これは、倉下が最近考えている「思考のための道具」の重要なツールセットになるだろう。


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